
いつのまにか一年以上かかわらせて頂いているりょくち真太先生の「戦国ベースボール(集英社みらい文庫)」。子供時代に本が好きで、ずっと子供向けの仕事がしたかった自分にとって、児童小説の表紙と挿絵というのはめちゃめちゃ理想の案件だ。
その後「戦国ベースボール」はヒット作となり続刊もどんどん出て、若松浩先生により最強ジャンプでコミカライズ(漫画化)もされ、有難い限りです。
…なんだけど、「戦国ベースボールのイラストをみてご連絡しました」という仕事の依頼は未だ無いのです。
こんなのおかしいよ!大ヒットシリーズの表紙の絵を一年以上描いているのだから「うちでもひとつ」的な依頼がひとつくらいあってもいいのでは!?
などと妻に愚痴っていたらある日夢を見た。
舞台は三鷹の某カフェで、目の前に女性の(かわいい)編集者が座っていて、企画の説明をしてくれている。
「この作品は日本ではあまり知られていないんですが、ヨーロッパでは赤毛のアンと同じくらい有名で古くから読み継がれている児童小説なんです。私自身、高校生のときに留学先でこの作品に出会って、いつか日本でも読まれるようになればいいのにと思っていました。今回我が社でこのシリーズを日本に紹介するにあたって、私としては是非戦国ベースボールで実績のあるトリバタケ先生に表紙と挿絵を…」
「光栄です」
僕はもちろん引き受けるつもり満々だけど、あまり表情にでないように気をつけている。この仕事決まれば、こんなかわいい人に定期的に会えるんだな〜とか考えている。
だけどまてよ、なぜ少女向けの小説の挿絵の依頼がこの僕に?
「作者は女性で主人公も女の子なんですけど、女性のイラストレーターさんにお願いするとどうしても女の子しか手に取ってくれなくなるんです。トリバタケさんの絵は男女問わず好まれる絵柄ではないかと私は思っていまして、編集長にプレゼンさせていただいたところ……」
…このあたりで目が覚めた。
あまりに鮮明な夢で、最初夢と信じられず、布団の中でスマホの着信履歴やメールの履歴を調べてしまった。もちろん着信の履歴はなかったしメールも来てなかった。赤毛のアンはヨーロッパじゃなくてカナダの話だし、女性編集者の評価は「そう思われたい」という僕の願望だ。朝の四時、真っ暗な和室で僕はひとり恥ずかしかった。
夢のような話を疑うと夢から覚める。注意されたし。
(戦国ベースボール最新刊は6/24(金)発売です。)