去る9/11(土)、武蔵野プレイスで小学生中学年以上向けのイラスト教室を行いました。これをもって武蔵野市立図書館全三館での小学生向けイラスト教室を終えたことになります。
月刊ジュニアエラでの武蔵野市立中央図書館の取材をきっかけに、昨年の2月から戦国ベースボールシリーズのイラストの展示(1ヶ月〜2週間)+小学生向けのイラスト教室を武蔵野市の各図書館で行わせていただきました。
くわしくはこちらの日記でも書きましたが、コロナ禍で予定していた個展の開催を諦めた中、たくさんのお子さんにイラストを見てももらうことができたし、「戦国ベースボール」という作品を知ってもらうお手伝いもできたと思います。
イラスト教室は、図書館職員の方から中央図書館の児童向け催しの一つとしてご提案いただきました。
小学生向けとはいえ、講師のような仕事はまったく経験がなく不安もありましたが、興味のほうが勝ってしまいお引き受けすることにしました。(コロナ禍なので時間は普段90分のところを1時間、参加人数も普段の半分の10名で開催)
とはいえ自分は講師的な仕事の経験がないどころか、誰かに絵を習った経験すらほぼないので、他人に絵の描き方をどう伝えればいいのかをまず考えなければいけません。それを考え出すと、そもそも人が絵を描くことになんの意味があるのか?イラストとはなんなのか?…というところまで立ち戻って考えなければいけませんでした。
軽い気持ちでお引き受けしたことを後悔しそうになりましたが、これはこれで非常に良い経験になったと思います。(結局明確な答えは出ず、それを小学生の子たちに伝えることもありませんでしたが)
ひとまず、家にあるイラストの描きかた/漫画の描き方系の本を再読。また三鷹市の図書館、武蔵野市の図書館にある児童向けの描き方系の本も数冊借りました。自分が子どもだった頃のことを思い出したり、絵を描いている息子の姿を観察したりしました。
いろいろ考える中で頭に浮かんできたのは
・そもそも1時間で「イラストの描き方」というような大きなテーマを伝えるのは無理
・1時間でいきなりイラストが上手くなることはない
・自分は子供の頃からワークショップ系のイベントが苦手だった
ということでした。
イラストの描き方本は様々ありますが、当然ながらどの本を読んでも「これ1冊でOK」というものはありません。本1冊で語りきれないことを1時間でしかも子ども相手に伝えきれるわけがないので、「描き方」ではなくもっと端的に伝えられる芯の部分を探さなければいけません。
そして1時間でイラストがうまくなる、ということもたぶん難しい。イラストに限らず子どもはなにかのきっかけで飛躍的に伸びることがありますが、初の講師役で参加者にそこを目指してもらうのは難度が高すぎます。
さらに自分は子どもの頃から見知らぬ他人とチームを組まされたり、参加者全員で同じ課題をこなすワークショップ的な学校授業やイベントが苦手でした。絵の好きな子どもが集まるということは、少なからず自分の子ども時代とよく似た傾向の子が集まるのではないかと考え、そういった内容は避けることにしました。
最終的な授業の形としては、自分が20数年イラストレーター業を続ける中で考え至った、絵の描き方のエッセンスのようなものを5枚のレジュメにまとめ、前半の30分でそれを解説。後半の30分は前半の話を参考に、図書館にある図鑑などを見ながら自由に絵を描いてもらうという流れになりました。
レジュメは結構長い時間頭を絞って考えましたが、できあがったものが平均的なイラストの書き方本冒頭数ページ、といった感じだったのには脱力したし納得もしました(基本は揺るがないということがよく理解できました)。
後半30分「自由に」絵を描いてもらうというのはワークショップ的な会にしたくないという思いからでしたが、大きな思い違いをしていたのは、そもそも自分が子どもだったらこういったイベントには参加しないということでした。地域の催しに自ら参加してくれる子どもたちの求めるものとはズレていたかもしれません。
そんな感じで初回は達成感もありましたが反省点も多く、2回、3回と回を重ねるにつれレジュメの内容(最終的に5枚→7枚になった)や教室全体の内容も変化していきました。
解説の時間に子どもとのやりとりを増やしたり、レジュメも後半はキャラクター系の描き方に絞る(息子にヒアリングしたところ、「子どもの多くは結局自分の好きなキャラクターが上手に描けるようになりたいのだ!」とのことでした)など自分なりに試行錯誤しましたが、共通して考えていたのは、「この1時間で完結するのではなく、家におみやげを持って帰ってほしい」ということでした。コピーして配布したレジュメも、これですぐに絵がうまくなるというよりは、今後の生活にほんの少しでも新たな視点が加わることを念頭に作成しました。
以下に公開しますので、よろしければ御覧ください。
現時点での最終的なレジュメ
1.「らしく」見えるのがイラストという雑な話
2.「本→長方形」のように、日常で目にするかんたんな形を探してみる
3.複雑な人間の顔や、キャラクター造形も意外と形の組合わせだったり、発想の根っこにあるよという話(ここは難しい話になるのでさらっと流します。レジュメはオマケ的に配る)
5.立体が描けるとより「らしく」見えるよという話から、かんたんな立体の描き方。身の回りのかんたんな形探しを、立体にしたり、分割したりしてみようという話。幼い頃のブロック遊びを思い出してもらいながら。
6.立体のラスボス「球」の話。円を立体的に見せるには?の話。これがわかると顔の向きが描ける
6.「マル」をねん土のカタマリと捉えてみる。ブロックあそびの話からねん土あそびの話へ。描ける人はマルで人間の体を描いてみよう。
7.おまけ。僕も単純な形の組み合わせからいろんなポーズを考えてますという話
今回やらせてもらったイラスト教室が子どもたちにとって楽しかったのかどうかはわかりません。そうであってほしいと願うばかりです。3回やってなお反省点だらけ。レジュメももっとシンプルにしたいし、全体の内容もテーマを絞りたいと思っています。いざ「自由に」絵を描けといわれても困ってしまう子がいる(考えてみれば自分もそうです)こともわかったので、選択制のテーマを設けるなどここも改善したい。
総じて言えるのは、反省点は多々あれども自分としてはすごく楽しかったし、繰り返しになりますが得難い体験ができたということです。
自分が人に物を教えることが向いているタイプだと思いませんが、今後もこういったご依頼があれば、どんどん挑戦してみたいと考えています。